この記事では、博士に進学した・進学を考えている学生向けに、博士課程の学生に対する経済的支援をまとめています。
できる限り多くの皆さんの役に立つ記事にしたいので、記事執筆の途中ですが順次公開していきます。
こんな制度があるんや、と認識していただき気になるところはご自身で調べていただけるようになるかと思います。
少しずつではありますが、記載する内容は増やしていくつもりですので、定期的にご覧いただけると幸いです。
修士学生に対する経済支援は数えきれないほどたくさんあるため、本記事では化学系の博士課程で受けられる支援について特化してまとめています。(化学系でなくとも応募できる支援もありますのでぜひ一度本記事からリンクを調べてみてください。)
こういった情報は調べるのが大変ですし、そもそも知らないものは調べようがないと思います。
このまとめ記事は、時間のない学生にとってかなり有益なものになると思っています。
当然ですが、大学によって応募できるものが異なることもありますし、これ以外にも経済的支援は存在しています。
また、年度によって名称が変わったり、打ち切りや変更になることもありますので、本記事をお読みになった後には必ず一次情報を確認するようにしてください。(可能な限り本記事からリンクで見れるように設定しておきます。)
- 学振
- 大学フェローシップ創設事業
- 次世代研究者挑戦的プログラム
- 吉田育英会「ドクター21」
- 天野工業科学技術研究所「大学院奨学金」「(特別募集)大学院後期博士課程奨学金」
- 化学人材育成プログラム
- 卓越大学院プログラム
- ACT-X
- 創発的研究支援事業
- 産総研修士卒育成モデル
- 産総研RA
- 理化学研究所「リサーチアソシエイト」
学振
いわずと知れた学振。採択率は分野にもよりますが、私の有機金属化学の分野では上位20%ぐらいに入らないと採択されないイメージです。

これはある年の私の申請した分野の採択状況です。
ホームページはこちらから。
競争率の高い分野を外すのも戦略として考えるべきだと思います。
指導教員と相談の上、自身がほかの分野で応募できないか考えて応募しましょう。
大学フェローシップ創設事業
大学フェローシップ創設事業は、文部科学省が令和3年度から実施している博士後期課程学生への支援制度です。
この事業は、博士課程への進学者数の減少や、博士号取得者数の減少傾向といった課題に対応し、将来の科学技術・イノベーション創出を担う人材の育成を目的としています。
本事業では、研究に専念するための生活費相当額(年間180万円以上)と研究費を支給するフェローシップを提供し、博士後期課程学生の処遇向上とキャリアパスの確保を全学的な戦略の下で一体として実施する大学を支援します。
例えば、私は年間200万円の生活費相当額と研究費として30万円の支援を受けていました。この研究費を利用して、初の国際学会参加を果たし、ポルトガルへ行ってきました。

また、博士課程修了後の安定的な研究環境の提供やキャリア支援の体制整備も支援の対象となっており、大学と民間企業等が連携して博士人材の多様なキャリアパスを支援する取り組みが進められています。
このように、大学フェローシップ創設事業は、博士課程学生が経済的な不安を抱えることなく研究に専念できる環境を整備し、将来の科学技術・イノベーションを牽引する人材の育成を目指す重要な取り組みとなっています。
この支援は大学ごとに採択されているか決まっていますので、ご自身の所属する大学が採択機関となっているかご確認ください。
また、採択期間は決まっているのでご自身が対象となるのかは各大学の事務にお問い合わせください。
大学によっても名前は様々ですし、途中で名前が変わることもあります。私の大学でも途中で別の制度と合併されて名前が変わりました。
次世代研究者挑戦的研究プログラム
次世代研究者挑戦的研究プログラム(JST主催)は、博士後期課程の学生を対象に、経済的な支援と研究環境の整備を通じて、将来のイノベーションを担う人材の育成を目的とした制度です。
採択者には年間240万円程度の生活費相当額と、研究費として年間最大70万円が支給され、学費免除とあわせて、研究に専念できる環境が整えられます。(このあたりの細かい内訳については大学により異なるようです。)
例えば、私の大学では年間210万円の研究奨励金(生活費相当:報告なしで自由に使えます)と年間5~20万円の研究費(領収書や指導教員のサインが必要)が各個人にもらえます。プラスで国内・国外学会参加にかかわる費用(参加登録費や宿泊費、航空券代など)や留学にかかわる費用を申請して採択されれば支援してもらえます。私もこの制度を利用して、これまでに学会参加やイタリア留学を経験することができました。
イタリア留学に関する記事は以下のリンクからご覧ください。(留学に関する記事を更新するにつれ追加していきます。)
支援対象は多様な分野にわたり、独創的かつ挑戦的な研究テーマに取り組む学生を積極的に支援します。
また、リーダーシップやキャリア形成を促進するプログラムも提供され、アカデミアにとどまらず産業界や政策分野でも活躍できる人材の育成が図られています。
この制度は、日本の科学技術力の底上げと、博士人材の社会的価値向上を目指す取り組みの一環として注目されています。
上記のフェローシップ創設事業と同じように大学ごとに採択されるかが決まります。
ホームページはこちらから。支援プロジェクトの項目からどの大学が採択されているのかを確認することができます。
吉田育英会「ドクター21」
吉田育英会の「ドクター21」は、自然科学系分野で博士後期課程への進学を目指す優秀な学生を対象とした給付型奨学金制度です。
この制度は、博士課程の3年間にわたり、月額20万円の奨学金を支給するほか、学校納付金として合計250万円以内、海外研究活動支援として合計100万円以内の実費を支援します。
対象者は、2025年4月1日時点で30歳未満の日本国籍を有する者で、自然科学系分野を専攻し、2025年秋または2026年春に日本国内の大学院博士後期課程に進学を希望する修士課程2年生です。選考は書類審査と面接により行われ、採用人数は約5名とされています。
この奨学金は、将来、各界のリーダーとして国際的に活躍し、研究成果を社会に還元できる人材の育成を目的としています。そのため、学術研究のレベルが高く、独創性やリーダーシップを備えた学生が求められています。
詳細や応募方法については、吉田育英会の公式ウェブサイトをご確認ください。
他の支援制度よりも早くに締め切りがありますので、応募を検討している方はお早めに動きだしてください。
天野工業科学技術研究所「大学院奨学金」「(特別募集)大学院後期博士課程奨学金」
天野工業技術研究所が提供する「大学院奨学金」は、理工系分野で博士後期課程に在籍する学生を対象とした給付型奨学金制度です。
主な概要:
- 対象者: 日本国内の理工学系大学院において、申請時に博士後期課程1年次に在籍する者。外国籍の場合は、「外国籍在留資格」および「日本語能力試験(JLPT)のN1」資格を有することが必要です。また、2025年度末で満26歳以下であり、人物・学術ともに優れ、健康で、学資の支援が必要と認められる者が対象となります。
- 給付内容: 年額180万円(月額15万円)を、原則として年2回(各回90万円)に分けて奨学生名義の銀行口座に振り込まれます。給付期間は1年次から3年次までの3年間です。
- 募集期間: 2025年6月1日から6月30日まで。申請は、当財団の電子申請システムを通じて行います。
- 選考基準: 研究計画の独創性・将来性・実現性、将来のキャリア目標、経済的支援の必要性などが審査され、必要に応じてWEB面接(日本語)も行われます。
この奨学金は、機械・精密機械、電気・電子材料、化学、環境・エネルギー分野の研究に意欲的に取り組む学生を支援し、将来の工業技術の発展に貢献する人材の育成を目指しています。
詳細や申請方法については、天野工業技術研究所の公式ウェブサイトをご確認ください。
また、特別募集があることもあります。今年度のリンクは見つかりませんでしたので、毎年しているわけではなさそうです。
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