理系の大学生となったからには、多くの場合研究室に配属され、研究活動を行い、その結果を卒業論文として形にすることで、学位をもらうことができます。
ほとんどの学生の場合、研究室に配属されるのは初めての経験であり、何を基準に選べばいいか、どんな研究室が自分に適しているのかなどわからないことだらけだと思います。
この記事では、もうすぐ研究室に配属される大学生を対象に、博士課程に進学した私から見た後悔しない研究室の選び方をご紹介したいと思います。
かなりボリュームのある内容になると思いますので、合計 3 つの記事に分けて記載したいと思いますので、他の 2 つもご覧ください。(一部内容に重複がありますので、一度いずれかの記事で確認していたら読み飛ばしていただいて構いません。)
初めに、私の大学の場合は 3 回生の末にどこの研究室に配属されるかが決定し、4 回生の 4 月からその研究室での活動がスタートします。
以降に何か月前や何月ごろという表現が出てきたら、この前提に従って書いていることをご承知ください。
私がすすめる基準としては、
- 研究内容
- 人
- 業績
- 運営方針
の 4 つに大きく分類できます。
この記事では、研究内容と人について書きたいと思います。
研究内容
選ぶ基準の一つとして、研究内容は外せないと思います。
配属候補を選ぶときは「どんな内容の研究をやっているのか、どんな知識が得られるのか」など、大まかでいいので知っておいた方がいいでしょう。
例えば、実験系がしたいのに計算系の研究室に進んでしまうと多くの場合実験をすることはできなくなります。(例外はあります。自分で合成した化合物を計算する研究室もあります。)
こういったミスマッチを防ぐためには、大まかにどんなことをやっているのかは知る必要があります。
知る方法としては、研究室のホームページで確認する、研究室見学や普段授業で先生・先輩に聞く、先生の業績を researchmap で確認するなどが挙げられます。
ただし、配属前に研究の価値や面白さを知ることはかなり難しいと思いますので、あくまでこういう種類の研究はやりたくないとか、その程度でいいと思います。
それにその研究の本当の面白さはやってからでないと分かりませんし、やっている本人が面白さを見つけて、自分で価値を見出して研究していくものだと思っています。
なので、博士に進学している学生としては意外なのかもしれませんが、研究内容は個人的にあまり重視することはなかったです。行かない分野の研究室を選ぶ理由ぐらいに考えていました。
ただし、やりたい研究のタイプがあるという人はこういったリサーチが大切なので、あらゆる手段で情報を集めなければいけませんね。
やりたいタイプの研究を探したい人には、過去の論文検索方法の記事が参考になるかもしれませんので、下にリンクを貼っておきます。ぜひ、ご一読ください。
今になって思うと、研究内容の幅の広さは研究室によって大きく異なるので、そういった観点で研究室を見ておくのは大切かなと思います。
反応開発がメインで他はあまりやっていないところとか、錯体作って物性ばかりみているところとか、こういう研究室だとその分野には強くなりますが、他の分野に触れる機会が少なくなりがちになります。
一方で、研究分野の幅が広いと、自分の研究室で違う種類の研究をやっている先輩や同期、後輩がいるので勉強のしやすさが格段に違いますし、触れる機会が比較的多くなります。
なので研究室見学に来た学部生には、「うちは研究の幅が他の研究室に比べてかなり広い方だ。いろんな分野を知ることができて、そのおかげで自分の研究の発想が広がるのが良いところだ。」という風に伝えています。
人
どんなコミュニティにおいても、人間関係はかなり大事ですよね。
そうです。研究室においても大事です。特に配属時点では、所属教員との関係性、先輩との関係性の 2 つがあります。
ただし、これらを配属前に完全に理解することは不可能だと思います。
ある意味配属前の学生はお客さんみたいな感じなので猫かぶっていることが多いと思います。特に、先生は授業のときの印象と研究室での印象が違うことはよくあります。
根本のところ(例えば、教育熱心とか熱い思いを持っているとか)は、それほど変わらないかもしれませんが、受ける印象は違う可能性はあるので、その辺りは考慮したうえで決めた方がいいと思います。
配属先の先輩との関係は、先生との関係よりも重要だと私は思っています。なぜなら、先生よりも常に近い距離にいて、いろんなアドバイスをくれる存在が先輩だからです。
この関係の合う合わないは研究室生活を送るうえで、メンタル面や研究面など様々な面で大切になってきます。
後輩は先輩が研究する環境を整える、先輩は後輩がのびのびと研究できるように支える。こういう関係って僕はすてきだなと思いますね。(10 数年ごりごりの体育会系で育ってきました。)
また、「博士進学を考えている学生」や「研究を本気で頑張りたいと思っている学生」は、その研究室に博士課程の学生がいるかどうか、博士がいなくても助教や博士研究員などの若手の先生がいるかどうかは確認しておいた方がいいと思います。
准教授や教授などの年のはなれた先生に聞きにくいことも、博士の学生や年の近い若手の先生になら聞きやすいことが多くあると思います。
加えて、常に近くにいるので相談しやすいですし、教えてもらえる機会も多くなると思います。研究に打ち込む姿や様々な重圧と戦っている姿を目にしておくことが将来の自分にとってもプラスになることは間違いないです。
苦労している姿を見て、自分には無理だと思って、違う道に進むのであればそれもありだと思います。博士に進学している身からしても、博士のプレッシャーは相当ありますよ。
私自身先輩の姿を見て知っているはずでしたが、実際体感してみると想像をはるかに超えています。
近くに研究のできる先輩(博士課程の学生、若手の研究者)がいる環境は、たくさんの刺激をもらえるのでそういう視点で研究室を選ぶのも 1 つの手です。様々な申請もやっているはずなので、参考になる資料もそういう先輩がいないと、集めるの大変ですからね。
また、研究室の雰囲気も重視すべきだと思います。
黙々と自分のやることだけやって、終われば帰るというスタイルのところもあるでしょうし、いつでも明るい話し声が聞こえたり、学生同士の交流が盛んなところだったりと研究室によってタイプが大きく異なります。
また、留学生や外国人の研究員がいるところだと、研究室の公用語が英語になるかもしれませんので、そういうところも考慮するといいと思います。レアなケースかもしれませんが。
どのスタイルが正解とかはないですが、自分自身に合った雰囲気の研究室を選ぶのが良いと思います。研究室見学をして、どんな雰囲気かを掴むことで自分にとって心地よく過ごせる研究室を選びましょう。
最後に
研究内容→そこまで大きく意識する必要はないが、どうしてもやりたいことがある人は前もってリサーチする。そうでない人は、自分がやりたくないと思う研究を探し、その研究室を除外するくらいの感覚で調べておく。
人間関係→先生との相性よりも、研究室においてより近くで頼ることが多い先輩との相性や研究室全体の雰囲気を重要視する。また、人によっては博士の先輩や若手の研究員がいるかどうかも確認すべき。
というのが、これら 2 つの項目における私の結論です。
私自身、体育会硬式野球部で部活動をしていたこともあり、早めに動こうと 3 回生の夏休みごろからは何個か興味のある研究室の見学に行っていました。
ですが、大体の学生が研究室を見学しに行く時期は 11,12 月ごろ、年明けでも結構多くいる印象です。
なので、遅くなってもいいので自分が進む可能性のある研究室の見学は必ず行っておいた方がいいと思います。
学生の雰囲気を感じるだけでも価値があると思いますので。
研究室見学で見ておくべきポイントは必要があれば、別の記事で書こうと思います。
また、残りの 2 つの項目(業績、運営方針)に関しては、別の記事で記載するので、そちらもご覧ください。
これらの一連の記事が研究室を決めるのに迷っている学生の皆さんの判断の一助となれば幸いです。(他の記事は本記事の前半にリンクがあります。)
ご意見・ご指摘・質問・相談などある方はご気軽にコメントください。
では、また。obrigado.
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