今回の記事では、研究室に配属されている大学院生が応募可能な研究費助成金について私の調べたものをまとめています。2024 年 5 月 12 日追記しました。
本当のところでは、ライバルを増やすことになるので D1 の現在に書きたくはないのですが、、、。
今まで、奨学金についてまとめられているものは多くありますが、研究費助成について書かれている記事はほかにあまりないように思います。
私の場合、化学系なのでその分野に絞るとその数はさらに減少します。
あったらいいな、をコンセプトにしているので、このまとめ記事の有用性は読者のみなさまにとって高いと判断し、公開します。
ただし、この記事をお読みになるタイミングでは、各助成の募集要項や助成そのものの有無が変わる可能性があるので、ぜひご自身で各ホームページをご確認ください。また、大学院生であっても年齢制限があるものもありますので、そこはご了承ください。リンクは各項目に設置しておきます。
私が応募したものは少し詳しめに紹介しますが、それ以外のものは悪しからず、、、。
リバネス研究費
リバネス研究費のホームページ(https://r.lne.st/)で現在募集中になっている研究費一覧
リバネスは「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という理念のもと設立され、その具現化のため、リバネス研究費の募集が始まりました。(HOME に記載の内容から引用)
リバネス研究費の特徴としては、一年間を通して様々な種類の研究費助成が募集されるというところです。それぞれの賞でいろいろな研究分野の助成がされます。
なので、それぞれを解説することはしませんが、その中でも募集範囲が大きく、大学院生しか応募ができない「incu・be 賞」についてご紹介します。
incu・be 賞の最大の特徴は以下の 2 点です。
- 大学院生が”自ら推進したい研究”を募集しており、研究分野は問われない
- 申請時点で大学院生かつ来年度も学生の人しか応募ができない
この特徴は私の知る限りほかの助成金にはありません。
これらの特徴が示すのは、研究室の研究内容に依存せず自らがやりたい研究を企画し、自身の研究費用で実行できるということです。
さらに、競争相手が同じ大学院生のみであるというところが最大の魅力となっていると思います。
通常の研究費助成では、大学院生も応募できるものもありますが、当然研究者として先を走っている先生方も応募できます。(年齢制限があるものもありますが。)
文章力、研究企画力、研究遂行力、実績などの面で、先生方と競争しなければならないことがいかに大変なことかは説明しなくてもわかるかと思います。
助成金によっては、助教や講師だけでなく、准教授、教授の先生方が名前を連ねているものもあります。
試しに、どこかの研究費助成の過去の採択者一覧をご覧ください。大多数が先生方であることがわかります。
以上のことから、リバネスの「incu・be 賞」が大学院生にとって大きなチャンスであることはわかるかと思います。
修士に上がったばかりの学生や助成金に応募したことがない人にとっては、初めてのチャレンジに適していると感じています。
ぜひ一度サイト(https://r.lne.st/grant/63-incube/)を確認してみてください。
また、実際に申請する際には、あらかじめ用意しておいた文章や図を応募サイトの各項目に入力する方式となっていますが、入力が終わると pdf 形式かなにかで見え方をよく確認された方がよいと思います。
私の場合ですが、入力した際にうまくいかなくて、とても読みにくい資料が出来上がってしまいました。
ササクラ環境科学財団
一般財団法人ササクラ環境科学財団のホームページ(https://www.sasakura.co.jp/sasakura-esf/)のスクリーンショット
科学技術の発展に寄与する学生の研究を支援するために、助成が行われています。
募集テーマとしては、環境科学に関する研究(水、熱、音、金属材料、地球環境保全、持続可能な成長など)です。
ホームページには、研究事例が挙げられていますが、この限りでないので少し違うかもと諦めるのではなく、自身の研究テーマを環境科学に関する側面から再考するいい機会だと思って、チャレンジすることをお勧めします。
この助成金の大きな特徴としては、大阪・兵庫・山口の 3 府県にある 11 の指定大学のみが支援対象となるということです。
年齢制限はなく、教授をはじめとする先生方も応募できるようですが、かなり制限された範囲内からの助成であるので、ほかの研究費助成に比べると獲得しやすい部類にあるかと思います。
助成対象期間が 7 月から 3 月末までと短いため、研究費の使用については注意が必要となります。
日立財団「倉田奨励金」
日立財団「倉田奨励金」のホームページ(https://www.hitachi-zaidan.org/activities/kurata/index.html)のスクリーンショット
日立製作所が日本の科学技術の発展を願って設立した研究助成金となります。
募集テーマとしては、自然科学・工学研究部門(1 : エネルギー・環境、2 : 都市・交通、3 : 健康・医療)と人文・社会科学研究部門があります。
それぞれの部門で金額や件数など異なりますが、自然科学系では 1 件当たり最大 100万(1 年)と 1 件当たり最大 300 万(2 年)があります。採択件数も 1 年のものは 30 件、2 年は 5 件程度となっています。(おそらく 3 分野合計で)
研究支援年数については、申請時に選択します。
日本国内の研究機関に所属する研究者や大学院生が対象となります。自然科学系では、募集年度の 4 月 1 日現在の年齢が 45 歳以下であることが条件となります。
3 月ごろに都内で贈呈式があり、同時に前年度の代表者による研究報告会および懇親会が開催されます。
その後所属大学にお金が入金され、その日から一年後の 3/31 までが研究費の使用期限となります。
笹川科学研究助成
公益財団法人 日本科学協会「笹川科学研究助成」ホームページ(https://www.jss.or.jp/ikusei/sasakawa/)より
研究している学生の中で最も認知度が高い研究助成は何かと言われれば、おそらく「笹川科学研究助成」だと思います。
学術研究部門では、近年「海に関係するテーマ」が重点課題として取り上げられているようですが、それ以外の分野からの応募も可能です。
ただし、日本学術振興会特別研究員に採用されている人は対象外となっています。
全体の総評では「海に関係する研究で応募されているのにも関わらず、目的等にほとんど海に関する記述がない申請書が見られました。」とあります。(引用:1. 全体的な総評 https://www.jss.or.jp/ikusei/sasakawa/senkou/souhyou1.html)
化学系においても、無理やり関連付けるのではなく、ご自身の研究分野で勝負されるべきだと思います。もちろん、海に関係するものはそのまま応募していいです。
総評を見ていると、提出された申請書の内、学部生や修士課程の学生が全体の約 6 割を占めており、博士課程の学生を含めると約 7,8 割に及ぶそうです。
35 歳以下の若手の先生方も応募されていますが、それでも学生が多いので、採択の可能性は高い助成金だと思います。
修士の学生でも応募できる助成金は稀だと思うので、博士課程の学生だけでなく、修士の学生にもぜひチャレンジしてもらいたい助成金です。
1 件当たり最大 150 万円の助成を受けることができ、採択状況を見ると、化学系では約 1/4 の採択率のようです。(申請件数 : 133、助成件数 : 34)この助成額は、私の知る限り学生が貰える研究費助成の中で最大クラスです。
また、学生だけでなく女性研究者の支援にも重きを置かれているので、採択率も男性: 27%、女性 : 29% とわずかに女性の方が多くなっているということも特徴として挙げられます。
つまり、性別や身分(立場)関係なく申請書のわかり易さや内容で勝負できる助成金かなと感じています。(基本的には学生同士が競争相手と考えると、実績にそれほど大きな差は出てこないと思うので。)
また、助成を受けた研究者には、研究成果を海外で発表する際の旅費などの一部を支援する「海外研究発表促進助成」(https://www.jss.or.jp/ikusei/oversea/)も設けられています。
申請書類は、研究の目的・実施内容・特色・状況・期待される成果・業績をそれぞれ 1500 字以内(英語では 4000 字以内)とかなりのボリュームがあるので、前もっての準備が重要となります。また、応募動機(1000 字以内)の入力も必要となります。
申請マニュアルがホームページで見れるので、よくご確認ください。
服部報公会「工学研究奨励援助金」
公益財団法人 服部報公会のホームページ(https://www.hattori-hokokai.or.jp/)のスクリーンショット
工学の発展に寄与する理論的・実験的な基礎研究で、1 年間に一応の成果が期待されるものに対して助成される研究援助金となります。
大学や研究機関に在籍する満 40 歳以下(応募締め切り時点)の教員や大学院生、研究員が応募できます。
本援助金は 1 件当たり 80~120 万円であり、15 件程度の採用が想定されています。
学部や研究科内で 2 件までの応募なので、学内で多数になった場合は、内部審査に勝ち抜く必要があります。
この援助金の特徴としては、採択された研究に関しては経過報告書を添付することで次年度のみ継続応募することも可能である、ということです。
この特徴は私の知る限りは他の研究費助成では見られず、稀なものだと思います。
リカケンホールディングス研究助成
リカケンホールディングス株式会社のホームページ(https://www.rikaken-hd.co.jp/)のスクリーンショット
生命科学の発展や進歩に寄与する独創的・挑戦的研究を行う若手研究者に対して支援することを目的に創設された研究助成金です。
ライフサイエンス分野(生命科学に関する化学・生物学・医学・薬学・理学・工学など)の基礎研究・TR(Translational Research : 基礎研究から得られた知見を実用化することを目的として行う、非臨床から臨床開発までの幅広い研究のこと)が助成対象となっています。
大学や研究機関に所属する 30 歳以下(申し込み時点)の研究者および博士課程に在学する大学院生が応募できます。
2024 年度の研究助成では、1 件当たり 50 万円の課題が 3 件、25 万円の課題が 2 件の計 5 件が募集されています。(2023 年度の募集要項では 50 万円の研究 3 件に対しての支援だったので、総件数・総額の増加が見られます。前年度の募集状況により変化させているものと考えられますので、応募要項をよくご確認ください。)
採択者は、大学院生が多い傾向にあると思われますし、募集要項にも「特に、若手研究者の研究を優先的に採択します。」とあるので、若手に対する支援に力を入れていることがわかります。
私のような反応開発系の研究は、ライフサイエンスと結び付けて考えるのは難しいかもしれませんが(私自身正直なところ、こじつけを超えて価値を付与する考えには至っていません。)、一度ご自身の研究をライフサイエンスの立場から考える良いきっかけになるのではないでしょうか?
エディテージ・グラント
ホームページ(https://www.editage.jp/blog/grant/)のスクリーンショット
editage grant による若手研究者の研究費支援プログラムです。研究分野は問われません。
この支援プログラムでは、5 名に 100 万円、中でも最優秀者には 100 万円の追加助成金が授与されます。
次点 15 名に 10 万円(現金+サービス券)、入賞者 20 名全員に Editage All Pack ライセンス(1 年間)が付与されます。
これらの支援金は、研究に関わる全ての費用に対して、用途を問わずに使用することができます。
対象者は今回のエディテージ・グラント2024 では 2024/11/1 の段階で満 22 歳~39 歳であり、修士号またはそれに相当する高等研究課程を修了している人であります。
審査は二段階あり、書類審査(20 名)、選考委員会による審査(10 名)を経て、10 名の通過者が決定されます。
選ばれた 10 名はインタビュー・プレゼンテーションのうえ、上位入賞者が決定されます。
これまでに論文を投稿していない方、資金援助を受けていない方、または2024 年 4 月までに援助を受ける予定のない方が優先されるとのことです。
応募開始は、4 月からなので現在この記事をお読みになっている博士のみなさんは挑戦してみてはいかがでしょうか?
住友財団「基礎科学研究助成」
ホームページ(https://www.sumitomo.or.jp/)のスクリーンショット
本助成は重要でありながら研究費が不十分な基礎科学研究で、特に若手研究者に対する萌芽的な研究を支援をしているものです。
理学(数学、物理学、化学、生物学)の各分野、およびそれらの融合分野の基礎研究が支援対象です。
営利目的、またはそれに繋がる可能性の高い研究は対象となりません。
助成期間は、11 月(受領日)より 1 または2 年間で、3 年を限度として延長することも場合によっては可能です。
1 件当たりの助成金額は最大 500 万円であり、申請金額からの減額もあります。
また、若手研究者とありますが分野によってその意味が異なるので、特に年齢制限はないようです。
30, 40 代の研究者が最も多く採用されていますが、20 代の人、中でも博士後期課程の学生も年によっては採用されるようなので、学生の方も採用のチャンスはありそうです。
最後に
以上、現時点(2023 年 12 月)で私が知っている、あるいは調べた大学院生でも応募可能な研究費助成についてまとめてみました。(2024 年 5 月 12 日追記)
研究助成金への応募書類を作成することは、文章を書く良い練習になりますし、自身の研究を見つめなおす機会にもなります。
採用されたら自信にもつながります。採択されてもされなくても、良いことばかりなので学生の内からこういうチャレンジをするのは大切だと思います。
修正や追加情報があれば、その都度本記事をブラッシュアップしますので、定期的にご確認いただけると幸いです。また、興味がある方は、各リンクから詳細について確認してください。
所属機関長や上長の推薦はほとんどの場合必須になるので、ある程度前もって書類準備や学内申請を進めていってください。(所属機関長の印鑑が必要な場合、1 週間から 10 日ぐらいはかかることを想定した方がいいと思います。まずは、大学や所属機関の研究推進課などにご確認ください。)
いつか奨学金や研究助成金の応募書類の作成方法と私の実践しているやり方について紹介する記事をかけたらいいなと思っていますので、そちらについてもアップしたらお知らせします。
ご意見・ご指摘・質問・相談などある方はご気軽にコメントください。
では、また。obrigado.
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