【研究室配属に悩む理系大学院生へ】博士学生の私が勧める選び方~③「運営方針」編~

理系の大学生となったからには、多くの場合研究室に配属され、研究活動を行い、その結果を卒業論文として形にすることで、学位をもらうことができます。

ほとんどの学生の場合、研究室に配属されるのは初めての経験であり、何を基準に選べばいいか、どんな研究室が自分に適しているのかなどわからないことだらけだと思います。

この記事では、もうすぐ研究室に配属される大学生を対象に、博士課程に進学した私から見た後悔しない研究室の選び方をご紹介したいと思います。

かなりボリュームのある内容になると思いますので、合計 3 つの記事に分けて記載したいと思いますので、他の 2 つもご覧ください。(一部内容に重複がありますので、一度いずれかの記事で確認していたら読み飛ばしていただいて構いません。)

初めに、私の大学の場合は 3 回生の末にどこの研究室に配属されるかが決定し、4 回生の 4 月からその研究室での活動がスタートします。

以降に何か月前や何月ごろという表現が出てきたら、この前提に従って書いていることをご承知ください。

私がすすめる基準としては、

  • 研究内容
  • 業績
  • 運営方針

の 4 つに大きく分類できます。

この記事では、運営方針について書きます。

運営方針

残すところ、運営方針だけになりました。正直に言えば、この項目で伝えたいことが多すぎて、3 部作に分けたといってもいいでしょう。

この項目でポイントとなることを箇条書きにします。

  • コアタイム:研究室にいなければならない時間
  • 部活やアルバイトに対する理解
  • 先生の学生指導スタイル
  • 安全管理への意識
  • ホームページの更新頻度
  • 論文のオーサーシップ:論文の著者の順や関わる学生の数
  • 院試休みの有無・期間
  • ドロップアウトする学生の有無とその理由
  • 設備・装置の豊富さ
  • 指導教員の決め方・テーマの決め方、所属教員の数
  • 研究室内のチームごとの分裂

ざっと挙げただけでもこれくらい見るべきポイントがあります。

以下では、それぞれについて少し捕捉したいと思います。

コアタイム

とは、研究室に必ずいなければならない時間を指します。

研究を一人でやるのは危険な状況なので、それを防ぐために、またある一定の時間の拘束をつけることでその時間分の実験量を学生に確保させるために、取り入れられているのだと思われます。(この書き方から分かるように私の研究室にはコアタイムは存在しません。)

コアタイムは、さぼりがちになると思っている人に対してはお勧めできます。

一方で、土曜も課されている場合があり、遊びや旅行に行けないとか、他の予定を入れるのが難しくなります。(相談すれば何とかなるかもしれませんが)

自分で進捗を見て、計画を立てたい場合やしんどい時やその日の予定している実験が終われば、帰りたいという人は、コアタイムがないところを選んだ方がよいでしょう。

部活やアルバイトに対する理解

先ほどのコアタイムと関連してきますが、時間的な制約があると、部活やバイトをするのが難しくなります。

先輩で部活やバイトの有無を聞くと良いと思います。また、私は体育会硬式野球部でしたので、4 回生の秋まで部活がありました。なので、配属前に先生には相談していました。(中には、5 年計画だね(つまりは、卒業できないね)、と言う先生もいました。速攻候補から外しましたが。)

個人的な考えですが、時期的に難しいときはありますが、基本的には研究と部活やアルバイトを両方行うことは十分可能だと思います。

先生の学生指導スタイル

いわゆる「放任型な先生」とか「指導熱心な先生」とかです。

どのスタイルが合うかは本人次第ですし、先輩から学べることも多いので、ここに関してはあまり気にしていませんでしたが、先輩があまりいないようなところでは、先生から直接教わる必要がある機会が多いと思いますので、ポイントになるかと思い、挙げました。

安全管理に対する意識

安全に研究を行うのは、とても大事なことです。ほとんどの学生にとっては、実験に携わるのは初めてのことなので知らないことだらけです。

自分自身で調べたり安全に関する意識を持つのは、当たり前ですが知らないことや気にしていなかったことを意識しろというのは無理な話です。

そこは知っている先生方が、注意するなり説明するなりで教えるほかありません。

企業では、安全管理に関して大学よりもはるかに厳しい(あくまで伝聞ですが)ので、大学のころからそういった知識を身に付けられるのは、かなり恵まれていると思います。

ホームページの更新頻度

多くの研究室がホームページを作成しています。

それぞれの研究室のメンバーや研究紹介、成果、イベントなどについて記載されています。

特に成果の項目は重要で、企業や他大学などの他の研究機関はその欄を見て、共同研究の話に発展したりします。

また、留学を考えている学生にとって、研究室を探す上で、ホームページはどんな研究をやっているかを知るために重要です。

研究室によってホームページの力の入れ具合は、異なりますが、更新が頻繁に行われているところは研究費や質の良い学生が集まるイメージがあります。

論文のオーサーシップ

オーサーシップとは、論文の著者になる(べき)人のことを指します。

論文の初めのところにタイトルとともに著者名が順に書かれています。

この順番や右肩に書かれている記号について、ここでは説明しませんが、ここにどれだけの人がかけられているかや学生がどの順番に入っているかなどを見ることができます。

この欄を見ることで、一つのテーマにどれだけの人が関わるかを見ることができるので、配属後の研究スタイル(個人的なのか、集団でやるのかなど)が少し想像できますし、学生がファーストオーサーになれているかなどもわかります。

院試休みの有無・期間(大学院に進学する人限定)

研究室に配属されるとすぐに大学院の入試の時期になります。

私の大学では、多くの研究室が院試前の約 1 ヵ月間 4 回生は休みになって、院試勉強をする期間を採用しています。

同じ大学だとあまり違いは大きくないかもしれませんが、外部の大学院を受験したい人と思っている人は、少しでも長い期間院試休みがあるところに進んだ方が、より勉強時間を確保できるのでそちらの方が良いかもしれません。

ドロップアウトする学生の数とその理由

大学院に進学する際に他の研究室に移る人が多い研究室やそもそも途中で来なくなる人がいるような研究室には、注意が必要です。

他にやりたい研究ができた場合や、単に来なくなった人に問題がある場合は別ですが、それ以外の理由で人がいなくなる研究室は、何らかの問題を抱えている場合が多いと思います。

ただし、他の研究室の人から、あそこの研究室は人がよくいなくなるからやばいと思う、といった伝聞系の話を鵜呑みにするのはやめてください。あくまでそういう話を聞いている程度の認識で、自身で見学に行くなり先輩に話を聞くなりして、その真相を確認してください。

設備・装置の豊富さ

様々な装置や研究設備を有している研究室では、自身の研究室で様々な測定や実験を行うことができます。

その良さは実際に研究を進めてから感じることが多いので、配属前からその良さを理解するのは難しいかもしれません。

しかし、すでに研究を進めている私から、配属に際し装置や設備を考慮することをお勧めします。

例えば、自分の研究室に NMR があればいつでも気軽に測定できますし、長時間の測定も研究室内の調整だけで行えます。

共通の装置を使わなければならない場合、測定したい時間に取れなかったり、測定方法によっては技官さんへの相談が必要なことがあります。

そうなると、測定のハードルが上がり、進度が遅くなることは避けられないと思います。それが結構なストレスになってくるので、この項目は確認しておくといいと思います。

指導教員の決め方・テーマの決め方、所属教員の数

研究室に配属されると、数名いる教員のうち主に一人が指導教員になります。(研究室や大学ごとに違いはあるかもしれません。また、准教授以上じゃないと指導教員になれないのような縛りはあるかもしれません。)

また、たいていの場合、配属された学生はその指導教員の研究テーマを卒業研究として行うことになります。

そのため、研究室に配属後、指導教員を選ぶことができるのか(すなわち、希望する研究テーマを持つことができるのか)ということも、研究室を選ぶうえで考慮すべきかと思います。

例えば、教授の人柄は好きだけど、准教授はそうでもない場合、研究室配属後確実に教授のテーマを持つことができるのかの保証がなければ、その研究室を選ぶのは、少しリスキーだと思いませんか?

稀にですが、卒業研究から自分で考えてテーマを出せ、というところもあると聞いたことがあります。

個人的な考えとして、初めは教員のテーマを卒業研究としてできる環境の方がいいと思います。

その教員の思考回路を模倣して、次の指示がどんなものになるか予測することは、研究遂行能力を磨く上で、良いトレーニングになると思います。

日々研究を進めていく中で、自分のオリジナルのテーマは考えていきましょう。

また、所属教員の数が多いと、その分他視点からのアドバイスや指摘を受けることができるので、成長するにはもってこいの環境だと思います。

研究室内のチームごとの分裂

これは、研究室の研究のスタイルによるかもしれませんが、数人のチームで研究を進める場合と各自で進める場合があります。

研究室によっては、同じ研究室のメンバーであっても、自分のテーマ以外何やってるか理解できていない研究室や同じテーマを進めるチームメンバーはわかっていても、他のメンバーのテーマには無関心な研究室、指導教員ごとに部屋がわかれていたり、ゼミがわかれて行われていたりで、学生同士全く交流がない研究室もあります。

せっかく同じ研究室に配属された人たちとの交流が少ないのは寂しいですし、知識の幅も広くなりにくいですし、いいことありません。

学生同士の交流が盛んで、議論も活発に行われている研究室を選びましょう。その方が、研究生活楽しくなりますよ。

最後に

「運営方針」この項目では、見るべきポイントが多くあり、どのあたりに重きを置くかは、人それぞれになります。

そのため、私自身が研究室を選ぶ際に、重要視したところをご紹介します。

「コアタイム」「部活への理解」「先生の指導スタイル」です。私自身、あまり時間に縛られて研究したくないのと、硬式野球部に所属していたため、コアタイムがないもしくは緩いことと部活に対する理解があることは必須でした。

それに加えて、先生の指導熱心なところにも惹かれて研究室を選びました。

D1 の現在、研究室見学に来る学生にアドバイスとして、この項目の中では「指導教員の数」や「装置や設備の豊富さ」は研究を始めてからその良さがわかると思うから、重要視した方がいいよ、という風に伝えています。

他にもここには書いていないことで、重要視したポイントがあったかもしれません。その時は追記します。

研究室の選び方に関して、一連の記事が研究室を決めるのに迷っている学生の皆さんの判断の一助となれば幸いです。(他の記事は本記事の前半にリンクがあります。)

ご意見・ご指摘・質問・相談などある方はご気軽にコメントください。

では、また。obrigado.

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